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富嶽周回・レボリューションズ ~富士山一周87kmの旅~ 後編

2009 年 11 月 26 日 このポストをTwitterでつぶやく このポストをYahoo!ブックマークに登録 このポストをクリップ! blogram投票ボタン

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fugaku_35.jpg
時刻はちょうど午後6時。しかしながら売店が閉まっているどころか、人の気配もありません。
残念ながらライトはおろかライターすら購入することはできず、さてどうしたものかと困ります。
第三エイドの手前ぐらいから同じぐらいのペースで近くを走ってきた選手に、後ろにくっついて走らせてくださいとお願いすると、ハンドライトもあるからヘッドライトを貸しますよと心優しいお言葉。
ありがたくお言葉に甘えさせてもらいます。
ある意味命の恩人です。
ここから精進口登山道に入るはずだけどその入り口がわからない。
河口湖口も何度か訪れているだけにそんなとこあったかな~という感じ。
後続選手も続々追いついてくるものの、みんなルートがわからず、暗がりの中を手分けをして登山道入口を探す始末。
そのうち誰かが駐車場の奥に入り口を発見したらしく全員で駆け寄ります。近づくと久しぶりのフラッグが地味~に設置してあります。なかなか意地悪です。
明るければ遠目でも見れたかもしれないけど、日が沈んでしまった状況では目の前まで行かないとそれがフラッグであることが判別できません。確実に夜間走行が伴うイベントなだけにもう少し目立つ工夫があってもよかった。
精進口登山道は原始林の中をひたすらまっすぐと下ります。このあたりは妙な連帯感からか自然とグループ移動でした。
登山道の前半は真っ暗な上、相当ガレているので幾度となくつまづきます。
途中ウッドチップが敷き詰められて走りやすいところもあったけど極一部。ライトがなかったら確実にアウトでした。
もう少し月明かりがあるだろうと考えていましたが、視界に入るのは黒い影だけ。ライトを消せば完全なる闇。走って下ろうと思うと足元を照らすライトぐらいでは不十分で、さすがに転倒もしました。手を擦りむいたのとタイツに穴が開いたぐらいで済んだのは不幸中の幸い。
次第に道は平坦になり、名所「富士風穴」の前を通過。ブリーフィングの時は見学していって下さいなんて軽く言ってましたが、夜中の真っ暗な状況では何にもわからんでしょうが!明るければ見たかったけど今観ても怖いだけなんでパス。
国道を横断するところでも突如ルートが途切れるので手分けして探索。団体行動だと心強いです。
そしてこれまた目立たないところにフラッグが。
本当に道を探しながら進む感じなのでまるでゲーム感覚です。
この先も長い一本道が続きます。
精進口登山道はとにかくうんざりするぐらいの直線。トレイルでこれだけまっすぐなとこもそうはないのではないかというぐらい、走っても走っても終わりが見えません。
ガレ場ではグループで走っていたランナーもそれぞれペースが違うので自然とバラけ、また一人旅が続きます。
このあたりはいわゆる青木ヶ原樹海。
夜中にたった1人で樹海の中をさまよっている(道はあるけど)シチュエーションは、なんて奇特なことをしているんだろうとおかしな気分になります。
あたりは漆黒の闇。聞こえるものは自分が鳴らす熊鈴の音だけ。上を見上げると木々の間から時折星空が垣間見えます。
今自分は樹海の中に1人で居るんだと改めて思ったら、だんだん変な妄想が浮かんできます。
暗闇を照らしたら首を吊った遺体をうっかり発見しちゃったり..ひとのうめき声が聞こえちゃったり..振り返ったら濡れた白装束の女の人が立っていたり..したらどうしよう?なんて考えていたら本気で怖くなって自然とペースが早くなりました(笑)。恐怖は自分の心が生み出すものなんですね。
あとコンパスが効かなくなるって噂を確かめるのを忘れてました。(ほとんどそんなことはないらしい)
永遠にも思えた登山道もまもなく終点に近づくころ、ついに第四エイドに到着!ゴールまでは残りたったの20km。
イスに腰掛け、カップラーメンで最後の栄養補給。
追加のウェアも預けていたけどこのままで行けそう。ヘッドライトとハンドライトをピックアップ。借りていたヘッドライトをあとから来るであろう命の恩人に渡してもらえるように、予備電池とわずかばかりではあるけれどお礼の意味を込めたスニッカーズとを一緒にスタッフに託しました。
(いざという時のお気に入りスニッカーズは、このとき自分ができる最大級のお礼のつもり)
スタッフに順位を聞いてみると17番手ぐらいらしい。あれだけロストしたわりに意外と前の方にいるのでびっくり。
それだけ他の選手も道に迷ったりして苦労しているのでしょう。
休憩を終え、ではそろそろ参りますかと立ち上がると途端に全身の疲労感がずっしり。特に腰回りはかなりの痛みが伴います。
走り始めれば落ち着くだろうと、のろのろペースで動き始めました。
ここからは東海自然歩道に入ります。五枚綴りの地図もいよいよ最後の一枚に突入。
本栖湖手前の森でまた迷子。地図に乗ってない道が多すぎ。頼りは東海自然歩道の道標だけですが、ところどころ朽ちていているのもあります。
キャンプ場付近もだいぶ迷走しました。
道が無数にあるだけにどこが正規のルートかさっぱりわからない。
地図とコンパスとケータイGPSを駆使してウロウロ。
どうやら迷っているのは自分だけ出ないらしく、あちらこちらから熊鈴の音がてんでバラバラな方向に移動しているのがわかります。
地図の縮尺がおおざっぱなのでGPSが活躍してくれました。しかし圏外が多かったり、前半写真を撮りすぎたせいか電池残量が危険な状態。どーしてもなところ以外は消耗を抑えるために電源OFF。
キャンプ場を脱出し、国道沿いの竜ヶ岳に沿って進む場所に出てからまたわからなくなります。
竜ヶ岳に向かって登っていくような林道入り口がありますが、はたしてここを進んでよいものだろうか。
その左手にも小さな道があるけど、地図にあるすぐ国道の戻ってしまう道に違いない。フラッグはない。
林道入り口にある看板に林道の概要図が載っているけれど、地図のコースとその図のカーブともだいたい一致しているような気がする。
しかし仮にこの山道を進んでいって違っていた場合は致命的なダメージを負うことになりそう。
看板と地図とGPSを何度も見比べます。
念のためフラッグが落っこちていないか辺りを探しもしてみますが何もないし、10分経っても誰もこない。
最終的な決断の決め手は足跡。真新しい数名の足跡らしきものを土のくぼみが林道を登る方向に発見。オレはシャーロック・ホームズかと思いながら意を決して林道を進むのでした。
久々の登りは足腰にきます。右のお尻にピキーンと鋭い痛みが走ります。こうなるとほとんど走るのはムリ。小幅の早歩きでがんばります。
緩やかにカーブしながら上り坂が続きます。
地図のカーブともだいたい合っているし、きっと大丈夫だろう。
でもなんか微妙にずれてきているような気がしないでも…
これでもし間違ってたら引き返す気力はもうないな~。
30分ほど登ったころ集団の選手一行が逆走してきます。
「あれ?皆さんどちらへ?」
「この道違うらしいよ」
「ガーン…」 恐らく落胆の表情がにじみ出ていたと思います。冗談かと思って俄かにその言葉が信じられませんでした。
「こんなに登ってきたのに.. またロストか…」
さすがに今回のは精神的にこたえます。
間違えたことを自分の目で確認したわけではないけど、この道が正しいという確固たる自信があるわけでもない。
気持ちの整理がつかず、呆然としている間にも集団は構わず下っていきます。
この状態でまた1人になったら恐らくゴールすることは難しいでしょう。
ギリギリ追いつける早歩きペースなのでなんとか食らいついていこうという決断を下します。最後尾からついていかせてもらうことにしました。
後からわかったことですが、この集団はハリ天狗さん達でした。暗がりだからよく顔がわからなかったのと、精神的にそれどころではなかった。
誰でもいいから一緒に行動しないと危険だと体がアラートを発していました。
結局林道入り口まで戻り、違うかと思っていた細い道が正解でした。
ハリ天さん一行は歩きとはいえかなり早いペースで、気を抜くあっと言う間に引き離されます。下りでなんとか追いついて、平地や登りでまた引き離されるの繰り返し。尻や腿に激痛が走るのでこれが限界のペース。
今度1人になったら帰る自信が全くないのでとにかくくっついて行くのでした。
いつの間にか日付もとっくに変わっています。
集団で行動していても迷う時は迷います。Uターンすることもしばしば。
ただリカバリーがものすごく早い。間違ったルートを進んでもここは違うという判断が早いのでダメージが少ない。確実にゴールに近づいてゆくのがわかります。自分だったら間違いなくロストワールドに突入していたと思います。同じ地図のはずなのになんであんなに先が読めるのか不思議です。
それにしても地図にない道というのが沢山あるというのがよくわかりました。
残り10kmの1キロ1キロが本当に長い。東海自然歩道の標識が途中途中あるけど、走っても走ってもちっとも距離が縮まらない。
でも空を見上げると満点の星空が。細かな星までびっくりするぐらいクリアに見え綺麗でした。時刻は午前1時。朝霧高原までもう一息。富士山からはだいぶ遠ざかって来たけれど、日が出ていたらきっと雄大な姿が見えたことでしょう。
それからさらに一時間後、ついに朝霧高原野外活動センターに戻ってくることができました。
終盤はいっぱいいっぱいな状態だったのであまり記憶に残っておりません。足を引きずりながらゴールまで帰ってくるので精一杯でした。
長かった。実に19時間のLong Distance Journey。総距離87kmだけどロスト分を含めれば95kmは確実に走っています。
fugaku_37.jpg他のトレイルのレースとは一風変わっていてとにかくいろいろな経験ができた大会でした。
特に重要だと感じたのがルートファインディングのスキルを磨くこと。これは村越代表も総括していますが、トレイルを安全に走るためには必要なことだと実感しました。
今回いろいろな人との出会いと協力があって無事にゴールすることができました。成り行きとはいえ、ご協力いただいた方には感謝しております。
さまざまな経験が自分にとって大きな収穫だったと思います。
来年以降の開催はまだ未定らしいのですが、開催されるのであればまたぜひ参加してみたいと思える大会です。
終盤はやや他力本願なところもあったので、次回はもっと自身で楽しんで参加できれるように成長していたいですわ。
願うならば晴天の富士山を走りたいなと。(開催が一日違っていれば快晴だったんですけどね)
登山とは違う富士山の魅力を存分に堪能した一日でした。

ゴール後は豚汁をおいしくいただきました。
仮眠を取り、早朝ドロドロの衣服の詰まったリュックを背負い、その足で出張に向かうのでした(間に合ってよかった)。

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  1. 2009 年 12 月 11 日 09:54 | #1

    素晴らしい!
    なんじゃ、このtoughなレースは!?
    ねごっち、よくぞ打ち克った!
    普通に決められたコース走ってエイド受けてってのと
    全然違うじゃん。
    信越よりはるかにキツイってのがタイムに表れてますな。
    それにしてもロストってきついなぁ~~!
    これは心が折れるねぇ。
    またいつかどこか一緒に走りたいね。
    お疲れ様でした。

  2. のりさん
    2009 年 12 月 11 日 23:38 | #2

    練習会の時にお話を伺いましたが、ここまで壮絶であったとは。感動しました。私も後からこんな大会があるのを知って参加したいと思いましたが、参加していたら、今頃この世界におさらばしていたかもしれません。特に、樹海の中を一人でいるなんて、泣いてしまうかもしれません。でも、レポートを拝見していて、もし来年開催されれば、参加してみたいなあ、とも思ったりもしています。完璧にこわいものみたさです。地図とコンパスが使えるように、また、迷わないように明るいうちに何回か分けて試走とかもしとかないといけませんね。いやあ、それにしてもすご過ぎます。本当お疲れさまでした。また、お話聞かせてください。

  3. 2009 年 12 月 12 日 10:50 | #3

    80人(実際完走は70人ぐらい?)の少人数な大会だったのもあり、完全一人旅(人間と会うことのない)の時間もかなりありました。
    いわゆるトレイルのレースとはまるで違うのでかなり面食らいましたが、今思い返すと相当面白かったな~と思います。
    来年あればぜひ!!

  4. 2009 年 12 月 12 日 11:04 | #4

    これの数週間あとに登山競争の練習会に行かれたんですよね?
    僕が行った時の景色とまるで違う雪化粧なんでびっくりしました。
    気温もまるで違ったのでしょうね。お疲れ様です。
    来年以降どういう形式で行われるのかわかりませんが、今回はタイムを競うものでもなく地図を読み解きならが進む大会なので、事前にコースを知っていて試走とかしてしまうと楽しさ半減ですよ。迷ってこそなんぼです(笑)
    (もともとアンチ試走派ですが(´0ノ`*))
    そういえば今回も詳細なルートは前日ブリーフィングの時初めて発表されました。
    明日はいよいよ、みたけ本番ですね。がんばりましょう!!